チーム対戦型FPS『オーバーウォッチ』評価/レビュー TF2の偉大さが身にしみる

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Overwatch(PC/PS4/XboxOne)をプレイすると嫌でも基本無料(F2P)のクラス制FPS”TF2(チームフォートレス2)”を思い出す。スパイには独特な技があり、それを極めていく修行が楽しかった。オーバーウォッチが面白いのは、様々なプレイスタイルとシビアさが両立しているからだ。

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TF2を感じずにはいられない

オーバーウォッチは数多くのヒーローを擁するクラス制と、6対6のシビアなチーム戦がウリの対戦型FPS。ヒーローは発売時点で21人いて、それぞれ違うアビリティが使えます。

用意されているゲームモード(マップ)は、一つのコントロールポイントを制圧・防衛する「CONTROL」と、その拡張版の「ASSAULT」、貨車を進行・妨害する「ESCORT」、「ASSAULT」と「ESCORT」が合体した「ASSAULT/ESCORT」の四つ。

ゲームモード「CONTROL」では、一つのエリアをより長く制圧できたチームの勝ち。

ゲームモード「CONTROL」では、より長くエリアを制圧できたチームの勝ち。

ゲームモード「ESCORT」では、貨車の近くに寄ると貨車が進み、最終地点まで進行できれば勝ち

ゲームモード「ESCORT」では、貨車の近くに寄ると貨車が進み、最終地点まで進行できれば勝ち

プレイして思ったことは、オーバーウォッチには「Team Fortress 2(以下、TF2)の血が脈々と流れている」ということ。タレットを設置できる「トールビョーン」はTF2でいう「エンジニア」だし、「ジャンクラット」は「デモマン」です。

オーバーウォッチに触るとどうしてもTF2をプレイしていた時のあの頃を思い出してしまいます。同時に、TF2がいかに偉大だったのかが思い知らされるのです。そしてオーバーウォッチはオーバーウォッチでエイムの上手さや協調性がより求められるせいか、カオスになりがちなTF2とプレイ感が案外違って、「ガチなTF2」といった印象を持ちました。

個人の願望を叶えてくれる、カジュアルかつシビアなチーム対戦型FPS

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漫画、映画、ゲーム、あるいは絵画や音楽。「作品」と呼ばれるものには大抵なんらかのテーマがあり、ほとんどのゲームではメインとなるゲーム性が必ず付いて回ることになります。例えば「レインボーシックス シージ」や「バトルフィールド」ならメインウェポンはライフルですし、個性を出すのならそのゲーム性に”何か”をプラスアルファで付け足していくのが基本です。

オーバーウォッチはどうでしょうか。手裏剣を扱う忍者「ゲンジ」や、仲間を守るために巨大なシールドを展開しつつ前進できる「ラインハルト」、オーブを対象に放つことで弱体化させたり回復させたりできる「ゼニヤッタ」など、ヒーローによってプレイスタイルが全く異なります。

オーバーウォッチをプレイすると自分に合ったヒーロー、つまりは「好みのプレイスタイル」を見つけられます。弾薬を集めなくても無限に撃てるといったカジュアルさもあり、その上で厳密なエイミングテクニックや味方との連携が求められるのです。

シビアだからこそ面白い

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オーバーウォッチには個性的なヒーローがたくさんいて、様々なアビリティが使えるから面白い。プレイしたことがない人はそう思うかもしれません。確かにそれは間違いではありません。

しかし実際はかなりシビアなFPSです。エイムが下手でも活躍できるヒーローは存在しますが、ほとんどのヒーローの場合、従来のFPSのような射撃テクニックが必要になってきます。なおかつ、オフェンス・ディフェンス・サポート・タンクと厳密にロール(役割)が区別されている上に、6対6のチーム戦なのでヒーロー同士の協力も不可欠です。

面白さの核はそこにあります。FPSとしての基礎が盤石に整えられていて、互いにサポートし合うことが前提となっています。そこには協力プレイの醍醐味と、ヘッドショットのようなFPS特有の快感もしっかり備えられているのです。

好きな戦い方で貢献できる

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「FPSのシビアさ」と「数多くのプレイスタイル」が両立している点が最も素晴らしいです。

バトルボーン(Battleborn)はオーバーウォッチと同じぐらい楽しいFPSですが、MOBA寄りになっているため「FPSのシビアさ」が欠けています。バトルボーンの面白さが分かるまで時間が掛かってしまうのはそのせいです。

参考:バトルボーン感想/評価/レビュー 面白さに気づくまで少し時間の掛かるMOBA的FPS

自分の好きな戦い方で勝つ。ゲームにおいて、これに勝る喜びはそうそうないでしょう。スピード感のある戦い方が好きなら瞬間移動が出来る「トレーサー」、DOOMのようにロケットランチャーぶっ放したいなら「ファラ」、CoDやBFのようにラン&ガンで攻めたいなら「ソルジャー76」、といった風にヒーローごとに戦い方が全く違ってきます。

数多く用意されているヒーローの中から好みのプレイスタイルを見つけ、自分の好きな戦い方で勝負できるから面白く感じるのです。そして、チームとして勝つために大して好きじゃないヒーローを嫌々使いながらも、そのヒーローのプレイスタイルが徐々に好きになっていく過程もまた楽しいのです。

ランクマッチモード「ライバルプレイ」では、自分の好きな戦い方だけではチームに貢献することができないこともあります。チームとして勝つ必要があるので、自分が得意なヒーローだけを使い続けるのは負けにつながることもあるのです。勝てれば問題無いのですけれども。

個人的に好きなヒーロー

サブウェポンがメインウェポンに。リボルバーの「マクリー」

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リボルバーといえばFPSではサブウェポンとして扱われがちです。しかし「マクリー」のメインウェポンはサブウェポンの王。そう、リボルバーです。

「リボルバーをメインウェポンにもってくるなんて…。ブリザードめ、分かってるじゃないか」そう思ってしまうぐらい、ブリザードの感性と王道感の察知能力は凄いです(※ブリザード=Blizzard Entertainment。オーバーウォッチを開発・運営している会社)。そういえば、TF2のスパイ(Spy)のメインウェポンもリボルバーです。

特に近距離戦がめっぽう強く、敵を一時スタン状態にさせる「フラッシュバン」の射程内に敵が入ってきたらほぼ勝てます。フラッシュバンからの残弾全撃ち、これ最高。

攻撃的タンクおばさん「ザリア」

こう見えても28才

こう見えても28才

最初はザリアのことを使えないババアだと思ってました。パーティクル・バリアはほんの数秒しか持続しないですし、使うタイミングも難しいです。

しかし、前線を押し上げるのに(自分にとって)最適なヒーローであることが分かるまで、そう時間は掛かりませんでした。敵に見つかったら普通撃たれますよね? しかしパーティクル・バリアで攻撃を受ければ、そのダメージによってパーティクル・キャノンの攻撃力が上がるのです。

直感的に理解しにくい能力ですが、これが意外と強い。攻めてくる敵の方へ向かっていって、パーティクル・バリアで相手の攻撃を無効化。攻撃力が上がっている状態でパーティクル・キャノンのエネルギー弾を放っていけば、複数の敵を巻き込みながら前線を押し上げていけます。

ザリアのプレイスタイルは見た目通りタフです。そしてヒットアンドアウェイ的でもあります。バリアが切れたらサポートのところまで戻るか回復アイテムを取りに行き、そしてまた前線を押し上げていく。守ると言うより押し上げる。このストロングでゴリゴリな戦い方が自分の中でヒットしました。

それに、タンク系ヒーローを使いたがるプレイヤーは比較的少ない方ですし、遠慮なく使っていけるのも良いです。

アルティメットアビリティの「グラビトン・サージ」は、着弾点の周囲にいる敵を引き寄せる大技。パーティクル・キャノンの範囲攻撃と併用すれば敵を殲滅できる

アルティメットアビリティの「グラビトン・サージ」は、着弾点の周囲にいる敵を引き寄せる大技。パーティクル・キャノンの範囲攻撃と併用すれば敵を殲滅できる

▼動画UP。サポートが優秀だとザリアは本領を発揮する

TF2は偉大だった

オーバーウォッチのレビューはこれで大体終了です。ここからはTF2のどこが偉大だったのかを語っていきます。ざっくり言うと、「TF2は装備を増やして戦略性を高めた」「スパイというクラスはとにかくトリッキーで、試合に緊張感を与える存在だった」「特殊な技があるおかげでゲームに深みが出た」といった感じです。

常識の破壊によって確かな面白さがまた一つ生まれた

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TF2には全部で9つのクラスが用意されていて、大型アップデートによって各クラスに新装備が追加されました。プレイヤーは各クラスごとにメインウェポン・サブウェポン・近接武器などの組み合わせを考えて武器を装備できるようになり、例えば特色のある新たなサブウェポンと元からあるデフォルト武器を装備して対戦することが可能になりました。

この出来事はTF2にとって大きな転換点で、新装備の追加は一定の戦略しか取れなかった戦闘に変化をもたらしました。TF2はクラスを増やすのではなく「装備を増やして戦略性を高める方式」を取り、意外性のある新装備の追加によってTF2は確実に面白くなっていったのです。

例えば、一定時間だけ透明になれたスパイは「デッドリンガー」の登場によって死を偽装できるようになって、スパイの「楽しさ」と「厄介さ」が格段に上がりました。「スパイは一度殺したら終わり」という常識が、大型アップデート以降は通用しなくなったのです。

スパイは試合に緊張感を与える存在だった

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9つあるクラスの中でもスパイが一番好きでした。変装キットで敵に成りすまし、透明になって敵陣の裏に回り、透明化を解除してから敵の背中をナイフで刺していく。あるいはエンジニアが作ったテレポーターやタレットを破壊する。スパイが出来ることと言えば大体それぐらいです。

しかし、バックスタブを連続して華麗に決めるのは快感そのものでしたし、テレポーターを壊すことが出来れば敵は前線に行くまでそこそこ歩かされることになります。その地味な妨害や連続バックスタブは試合を大きく変える力がありました。相手側にスパイが一人いるだけで、そのたった一人のスパイに対して常に注意を払う必要があったのです。定期的に後ろを振り向いてスパイがいるかどうか確認したり、スパイが居そうな所に攻撃したりして。

相手がパイロ(火炎放射器を扱うスパイチェックに最適なクラス)に変更してくると「スパイに殺されたのが相当悔しかったんだな」ということが伝わってきて、それはそれで趣きがありました。

特殊な技を極める行為もまた楽しかった

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ソルジャーならロケットジャンプ、パイロなら炎上中の敵をエアーブラストで浮かせてから近接武器で攻撃するとか、TF2にはそういった特殊な技があり、それを極めようとする行為もまた面白かったのです。

中でもスパイには「トリックスタブ」(trickstab)と呼ばれる技があり、これが決まると相手プレイヤーから「facestab!(顔を刺しただろ!)」とか「Cheat!(チートだ!)」「lag(ラグのせいだから)」といった負け惜しみを引き出せます。

プロ級の腕を持つスパイは、敵を階段にまで誘導し、その段差を利用してジャンプして、敵の頭上を乗り越えてスタブを決めるという大技「ジャンプスタブ」(トリックスタブの一種。ステアースタブとも呼ばれる)を当たり前のように繰り出してきます。

そのことを分かっているプレイヤーは迂闊にスパイには近付きません。しかし、プロ級のスパイになってくるとその敵の思考すらも見越して「アンバサダー」(ヘッドショットが決まるとクリティカル判定になる銃)で撃ってきます。

もちろん、下手なスパイはパイロに焼かれて即死亡します。しかし凄腕のスパイは「スパイを見つけたらとりあえず火炎放射器で焼いとけ」というパイロの慢心を利用して「サイドスタブ」(敵の横側を狙ってバックスタブを決める技)を、これまた自然に決めてきます。

こういったリスキーかつ繊細な技を試合の中で試し極めていく「職人魂」的な観念が、TF2には存在していました。

▼スパイが次々にトリックスタブを決めていく動画。スパイ、やばい。

最後に:オーバーウォッチにはステルス要素が圧倒的に足りてない

最終的にはいかにスパイが好きなのか語るだけになってしまいましたが、実はスパイはけっこう悲しいクラスでもあります。大会だとボイスチャットで連携が密に取れてしまうので、スパイの変装が簡単にバレてしまうのです。確かに大会でもスパイを使っている人はいましたが、トリックスタブ頼りになっていたのが切なかったです。しかしそれでもカジュアル戦においては、スパイは使う人によっては敵チームに猛威をふるう存在でした。

話を戻します。オーバーウォッチは面白いです。当たり前です。基本となっている部分はTF2と似てますし、そもそもTF2は傑作FPSですし、さらには他のFPSから面白い要素を抜き取ってますから。

また、アルティメットアビリティの応酬による逆転に次ぐ逆転が、白熱さ加減に拍車がかかってます。リーパーが「デス・ブロッサム」であらかたの敵を殺したのに、マーシーが「リザレクト」を使って死んだ味方を全員復活させるとか、燃えます。

唯一の不満はオーバーウォッチには「スパイ」のようなヒーローがいないこと。TF2から「エンジニア」を臆面もなくパクったんだから「スパイ」も堂々とパクってしまえばいいのに、と思います。

ブリザードは私のためだけにも「スパイ」のようなステルス系ヒーローを追加すべきです。「だったらTF2をやれ」ですって? なるほど、貴重なご意見ありがとうございます。

公式サイト:オーバーウォッチ | SQUARE ENIX
Steam:Team Fortress 2(当初は有料だったが、後に基本プレイ無料となった)

追記:ステルスヒーロー「ソンブラ」でプレイするのが楽しい

オーバーウォッチに新たなヒーロー「ソンブラ」が追加されました。透明化しつつの移動速度上昇など、TF2のスパイと似たような能力を扱えることもあり非常に楽しいです。

ただライバルプレイで使用すると味方から「別のヒーローにしてくれ」等と言われる傾向にあります。オーバーウォッチでもステルス要素の強いクラスに対する扱いはあまり良くありません。

個人的には「背中を刺したら敵が一撃で死んでしまうナイフのような近接武器」が扱えるステルスヒーローの追加を願っています。

(以下、アフィリエイト)

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