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【ストーリーのネタバレ注意】二周目後のQuantum Breakの感想/評価/レビューと、黒幕の目的や謎、真のエンディングやシフターについての考察。主人公ジャック・ジョイス、ポール・セリーン、マーティン・ハッチの中で正しかったのは誰か。時間の終わりは黒幕をどう変えたのか。
目次
- この記事は一個人が物語を都合よく解釈して書かれました
- はじめに
- まとめ
- 一体誰が正しかったのか?
- ポールの主張が正しい理由
- クォンタムブレイクにおける過程と結末の解釈
- 「ノヴィコフの首尾一貫の原則」が採用されていると言える根拠
- ジャックは友を信じるべきだった
- 「無題のメモ」は誰が誰に対して書いたのか
- シフターの特性について
- ハッチがシフター完全体になった理由
- ハッチは全人類がシフターになることを善と考えた
- ハッチは「時間の終わり」と「人類シフター化計画」を実現しようと何度も挑戦していた
- ハッチは人間としても生きたかった
- キム博士は人類シフター化計画が失敗に終わる要因の一つだった
- とりあえずモナーク社員を全員シフター化させることから始まった
- ポールはハッチの計画に賛同した
- ポールはシフターとして死んだのか
- ハッチの目薬は人間であり続けるために必要な物
- ポールを信じていた人はもっと自信を持った方がいい
- ジャックもウィリアムもプレイヤーも、みんな大バカ者だった
- 最後に:見方によって変形する怪作
この記事は一個人が物語を都合よく解釈して書かれました
結末を意識させつつ最後にどんでん返しを食らわせ、プレイヤーを置き去りにするという、SFミステリーとしては独特の結末でした。しかし、あのやり方には賛否両論があるかもしれません。
この記事で述べる結末の解釈は、一個人としての解釈でしかありません。クォンタムブレイクは、選択肢によってストーリーの内容が変わるシステムになっています。選択肢の組み合わせによって実写ムービーが一部追加されたり、ゲーム内で登場する資料の文章が変わったり、別の選択肢を選んでいれば発生した出来事は「そもそも無かった出来事」として処理されることもあります。
要するに、クォンタムブレイクのストーリーはプレイした人によって変わってくるということです。なので、この考察記事は「一個人がストーリーを都合よく解釈したもの」として考えてくださると幸いです。また、二周しかしておらず、ストーリーアイテム等のコレクション類は100%コンプリートしていませんし、日本語化されなかった部分(日記・テレビ・ラジオ)については考慮されていません。多くの誤解が含まれている可能性がありますし、お恥ずかしいミスもあるでしょう。
まだプレイしていない人はこの先の文章を読んではいけません。絶対に読んではいけません。私が言えることは、クォンタムブレイクのストーリーとその見せ方は異質だったということです。時を操る能力を駆使したガンアクションは…これ以上言うのはやめておきましょう。とりあえずアフィリエイト貼っときます。
(以下、アフィリエイト等)
はじめに
クォンタムブレイクでは、エンディングを明確に説明していません。つまり、物語をどのように解釈してもいいということです。それなら思う存分、妄想してやろうじゃないですか!
まとめ
- ポールは「運命は変えられない」と信じていて、それは実際正しかった。
- ポールは、過去は変えられないからその事実をそのままにして別の解決策(ライフボート・プロトコル)を推し進めた
- 人間は、世界共通の時間軸とは別に、人それぞれ固有の時間軸を持っている
- 時間の終わりは絶対に避けられない運命
- ハッチは時間の終わりを実現させるために、そして全人類をシフター化させるために何度もタイムトラベルしている
- ハッチは時間が止まった時に奇跡的に「シフター完全体」となり、シフターと人間の姿を切り替えられるようになった
- ハッチは人間としても生きていきたかった。理解者が欲しかった
- キム博士が存在していると「人類シフター化計画」を進められなくなるので、ハッチは彼をシフター化させた
- ハッチはクロノン粒子が入った目薬や飲み物などによって、とりあえずモナーク社員を全員シフター化させるところから始めた
- ポールはハッチの考えに影響されてしまった
- ポールはシフター完全体になるのを待っているのかもしれない
- ハッチが目薬を使っていたのは、人間の姿を維持するためだった
- インタビュー形式で進むストーリーこそがミスリードだった
- ジャックと、彼を簡単に信じてしまったプレイヤーはみんな大バカ者
- クォンタムブレイクは人によって姿を変える怪作
一体誰が正しかったのか?
ポール・セリーンが正しかったです。なぜなら、運命は変えることができないからです。詳しく解説する前にまず、クォンタムブレイクの結末に関わってくる主要人物三人について軽くおさらいしておきましょう。
ジャック・ジョイスの目的
クォンタムブレイクの主人公は「ジャック・ジョイス」です。時間が断裂した際に、彼は時を操る能力、つまりクロノン能力に目覚めます。
最後には、兄である「ウィリアム・ジョイス」によって作られた対抗手段(C.F.R=クロノン・フィールド・レギュレーター)で時間のひずみを完全に修復します。ジャックの目的は一貫して「時間の断裂を修復して全世界を救うこと」です。
後半で説明しますが、ジャックは「大バカ者」です。ジャックの仲間も含めて。私たちプレイヤーはしてやられたんですよ…!!
ポール・セリーンの目的
ポールの目的は「時間の終わりを解決すること」です。世界を救うという点に関してはジャックと同じ。しかしその手段が違います。ポールは対抗手段を使ってライフボード・プロトコルを発動し、時間が終わってしまった後に限られた人員だけで時間を修復しようと試みていました。
マーティン・ハッチの目的
マーティン・ハッチの目的は「時間を終わらせ、シフターだけが生きられる世界を創造すること」です。この点に関してはゲーム内で明確に説明されていません。しかし、そうとしか考えられない資料が終盤に出てきたり、ハッチ自身も「調和のとれた世界へ」などと発言しているので、これは間違いありません。
ポールの主張が正しい理由
ポールは幾度と無く「運命を変えることはできない」という主張を繰り返します。それはなぜかというと、過去を変えようと何度も挑戦してみたものの、全て失敗してきたからです。だからポールは「過去は改変できない」という考えのもとモナークソリューションズを設立し、ライフボート・プロトコルの実現を進めてきました。
ここで疑問が噴出する人がいると思います。ポールは時間の終わりをその目で見て来ました。普通に考えれば、誰も世界を救えないことを悟るはずです。その後、ポールはタイムマシンを使い過去に戻ってくるのですが、それでもなぜ世界を救おうとしたのでしょう?
答えは簡単です。「運命は変えられない=事実は変えられない」ということだからです。時間の終わりは必ずやってくる運命です。だからポールは、その事実を変えることなく世界を救う方法を考えました。
ポールが出した結論は「時間の終わりの中で解決方法を探していく」というものでした。しかしポールの計画はジャックによって潰されます。果たして、ジャックの行動は正しかったのでしょうか?
クォンタムブレイクにおける過程と結末の解釈
結論を言うと、ジャックの行動は完全に間違っていました。なぜなら、クォンタムブレイクでは「ノヴィコフの首尾一貫の原則」と「人それぞれ時間軸が違うという解釈」が採用されているからです。
ノヴィコフの首尾一貫の原則とは
ノヴィコフの首尾一貫の原則
イゴール・ノヴィコフの首尾一貫の原則とキップ・ソーンは、時間を遡るタイムトラベルがパラドックスの危険を冒さずに可能となる一つの見方を提示した。その仮説によると、唯一の可能な時間線は完全に首尾一貫しているものだけであり、時間旅行者が過去に遡って行う行為はすべて歴史の一部であって、首尾一貫性を崩すようなパラドックスとなる行為は決して実行できない。いわゆる決定論と呼ばれる考え方であり、自由意志という観念とは矛盾する。つまりこの考え方でいけば、過去へのタイムトラベルが可能だとしたら、歴史によって個人の行動が決定されることになる。
わけ分かんないですよね。こっち↓の方が分かりやすいです。
過去は変えられない
ノヴィコフの首尾一貫の原則に対応した解釈では、過去に遡っても自然の法則(あるいは他のなんらかの要因)により、そのタイムトラベルがなかったことになるような如何なる行為も防がれるとする。例えば、祖父を撃とうとしても銃弾が外れたり、そのような行為の成功を妨げる何らかの事象が発生する。歴史を改変しようとする時間旅行者の行為は常に「不運」に見舞われ失敗に終わるか、何らかの偶発事によって失敗に終わる。結果として時間旅行者はもともと知っている歴史を改変することができない。小説などでよくあるのは、時間旅行者が単に防ごうと思っていた事象の発生を防げないだけでなく、偶発的にその事象の発生を助けてしまうというパターンである。
つまり、ウィリアムが言っていたように「時間とは卵のようなもの」ということです。卵が割れてしまったら、その事実を変えることはできません。タイムマシンを使って卵が割れる前まで戻り、卵が割れるのを防げたとしても、結局は”何かのはずみ”で割れてしまうのです。
しかし、これはクォンタムブレイクで採用されている解釈です。「ノヴィコフの首尾一貫の原則」を則っていたとしても、他の作品では別の解釈が取られていることもあるでしょう。
簡単に言うと、過程や結末は物語の作成者によってどんな風にでも設定できるということです。卵が割れたことを過程(重要なことではないのでこの事実は変えられる)、地面に落ちた状態を結末(絶対に変えられない)、という風に見なすことだって可能です。
クォンタムブレイクの場合、「重大な出来事」を結末(変えられないもの)として考えてもよさそうです。なぜなら、時間の終わり(結末)を回避するために、主人公が奮闘するというストーリーになってますから。
世界共通の時間軸と、人によって違う時間軸
クォンタムブレイクの世界では、「世界共通の時間軸」と「人それぞれ違う時間軸」の二つが採用されていると考えていいでしょう。なぜなら、そう考えることで全て説明できるからです。
「世界共通の時間軸」とは、全人類が共通して認識している時間のことです。時間の断裂によって止まることはあっても、ただの概念でしかないのでタイムマシンに乗って過去に戻ったりすることはありません。西暦が2014年・2015年・2016年…とまっすぐ進んでいくように、基本的には止まりません。
「人それぞれ違う時間軸」は、ここでは「一個人でしか持ち得ない唯一の時間軸」と定義することにします。その名の通り、人によって時間軸が違うということです。例えば、ある人が過去にタイムトラベルしてその世界で住むとしても、その人の人生は続いていきます。つまり「世界共通の時間軸」とは別に、そして同じ世界に住むもう一人の自分とは別に、その人の時間軸が進んでいくということです。
「人それぞれ違う時間軸」が採用されていると言える根拠は、ベス・ワイルダーやポールが実際にタイムトラベルで過去に行き、そこで暮らしてきたこと等が挙げられます。
「人それぞれ違う時間軸」によって、ポールが行ったタイムトラベル実験の説明もできます。ポールはジャックの目の前でタイムマシンを使い2分過去に戻ろうとします。しかし、タイムマシンに入る直前でもう一人のポールが目の前に現れます。
一つの世界に同じ人間が二人存在してしまう現象は、下の図を見れば理解できるかと思います。
「ノヴィコフの首尾一貫の原則」が採用されていると言える根拠
終盤でウィリアムがジャックに「過去を改変しようとしないでくれ」と言ったり、ポールが「運命は変えられない」と言ったり、ベスが何度も過去を変えようとして失敗したように、クォンタムブレイクでは基本的に「ノヴィコフの首尾一貫の原則」が採用されていると考えるのが自然でしょう。
対抗手段を使い世界の時間を修復した時に、「あいつ(ポール)の言動はすべて間違ってた」というジャックの発言に対してウィリアムが「そうかな」と返答したこと。そして、クラリス・オガワが「彼(ポール)は正しかったのかしら?」とジャックに質問したこと。
これら二つは「クォンタムブレイクの世界では運命は変えられない」ということ、つまり「ノヴィコフの首尾一貫の原則」が採用されていることをほのめかしています。
ジャックは友を信じるべきだった
ここまで読んできたならもうお分かりですよね。ポールとベスが見た「時間の終わり」は避けられない真実だったのです。ジャックがポールから対抗手段を奪って世界を救ったとしても、それは一時的な状態でしかないわけです。
だからジャックとその仲間たち(ウィリアムやベスなど)は、ポールの言うことを信じてあげるべきでした。「時間の終わり」という事実は変えられないのですから、その事実を保ったまま別の解決策を模索すべきだったのです。ライフボート・プロトコルで助かる研究者たちに世界を託した方が、時間を完全に修復できる可能性は高かったはずです。
しかし、ジャックの行動によって対抗手段は燃え尽きてしまいました。もう一度同じものを作るには多大な労力と時間が掛かります。クロノン・シンドロームを発症してしまったジャック、クロノン粒子を大量に浴びたはずのウィリアムは、ハッチの願望が叶う前に対抗手段を作り上げられるでしょうか。
ジャックは目の前のことを解決するために戦ってきました。しかし、ポールの言うことを真剣に聞こうとしませんでした。ベスの日記を読んで根本的に考えが変わることもありませんでした。
「無題のメモ」は誰が誰に対して書いたのか
ここからは主に、黒幕であるマーティン・ハッチについて解説していきます。ハッチは「みんなシフターになってしまえばいい」という考えを持っていました。だから、裏であれこれしていたわけです。
このことは「無題のメモ」から分かります。「無題のメモ」には誰が誰宛に書いたのか明確に示されていませんが、ポールの執務室の前に残されていたこと、シフター状態のハッチが通って行った通路を進んだ先にポールの執務室があったこと、ハッチがポール宛に書いたとするとつじつまが合うこと、この三つの事実があれば誰が誰に対して書いたものか分かります。ハッチがポールに対して「無題のメモ」を書いたのです。
「無題のメモ」を読んで混乱した人も多いと思います。もう一度読んでみましょう。重要な部分を要約すると、以下の通りになります。
- 天然のタイムマシンのせいで最終的にシフターとなった
- シフターになった後は、長い間、身を焼かれるような苦しみを味わった
- 時間の終わりによって、今の様態を獲得した
- 時間のひずみと時間の終わりこそが、自分でいられる唯一の地点
- 時間の断裂が発生する時は、何度も正しい選択をしようとし続けた
- みんながシフターになれるよう、役目を果たした
シフターの特性について
シフターに関しては、モナークタワー内にある資料から以下のことが分かっています。
- 量子重ねあわせ状態で存在すると理論化されている
- 非常に危険な歪みフィールドに囲まれている
- 強いダメージ抵抗を示す(通常兵器は無意味)
- 時間の終わりに生息する
- 無時間状態(ひずみ内)にしか存在しない→時間の断裂が進むにつれ現れると予想される
- つまり、シフターはひずみ抵抗エリアには侵入できない
クロノン破壊波動関数生命体=シフターになると「全てであると同時に無となり、あらゆる場所に存在するが、同時にどこにも存在しない。何度死を繰り返しても生き続けられる」という量子重ね合わせ状態になります。もうワケがわかりません。
クォンタムブレイクでいう「量子重ね合わせ状態」とは、「目の前にいるけれど見えていない状態」+「ひずみ内だと姿が見える状態」が合わさったものなのではないでしょうか。つまり、シフターは目に見えないけど実はそこら中にいて、時間が止まっていればシフターは目に見える状態になるということです。「1つの場所にいると同時にあらゆるところに存在する」というのは、要するにそういうことなんじゃないでしょうか……すみません、頭が痛くなってきました。
また、ハッチの言う「身を焼かれるような苦しみ」とは、時が正常に進んでいる世界でシフターとして生きる時に感じる苦痛を指すのでしょう。
ハッチがシフター完全体になった理由
引用:Quantum Break – 無題のメモ
ハッチはシフターの中でもさらに状態が進んだシフターです。ここでは「シフター完全体」と名付けることにしましょう。
クロノン・シンドロームを発症し、シフターになって誰からも姿が見られないようになってしまったハッチは、その状態のまま時間の終わりが来るまで世界をさまよい続けました。
そして、世界の時間が止まったその時に偶然にも「シフター完全体」になりました。恐らくこれはシフターの中でもハッチだけに起きた奇跡。「私だけが向こう側に行く方法」これは人間の姿とシフター状態を切り替えられるようになったことを意味しています。
引用:Quantum Break – 無題のメモ
※ここでは「時間の終わり」の到達によってハッチがシフター完全体になったと仮定します。もちろん、時間の断裂が始まった瞬間(ポールとジャックがタイムトラベル実験をしていた時)にハッチがシフター完全体になったとも考えられるでしょう。
ハッチは全人類がシフターになることを善と考えた
引用:Quantum Break – 無題のメモ
時間の終わりがやって来てシフター完全体となり、自由になったハッチは思いました。全人類がシフターになるべきなのではないかと。「みんなが俺みたいに神になれば最高じゃね?」これこそがハッチの計画です。
ハッチの言う「神」とは、シフターを意味します。彼にとって、シフターであるなら無条件で神なのです。「人間よりも神の方がいいに決まっている。しかし、神は時間の終わりでしか自由になれない」この考えを元に、ハッチは計画を進めていきました。
ジャックの住む世界では、確実に時間の終わりが実現します。それを実現させたのはハッチです。ただのシフターだったハッチは、時間の終わりがやって来て、人間の姿に切り替えられる能力を獲得した時点で「時間の終わりを実現させたのは自分だ」と気付いたのです。あるいは、未来のハッチから何か伝えられたのかもしれません。未来のベスが幼き日の自分に会いに行ったように。
「時間の終わり」の時点からタイムマシンを使い、「人類シフター化計画」を携えてハッチは過去の世界にやって来ました。未来から来たハッチは時間を終わらせるため、そして全人類をシフターにするために、モナーク内における昇進の際に裏で血なまぐさいことをやったり、相応のポジションについてポールを誘導していきます。ジャックが一度世界を救ってしまいますが、タイムトラベルを繰り返して最終的には彼の望み通りになります。
ジャックが一時的に時計の針を進めることが出来たとしても、ハッチにとってそれは織り込み済みです。クロノン・シンドロームを発症したジャックは、ハッチと協力するか、非協力的な態度をとるか、両方の未来がヴィジョンによって見えるようになりました。しかし結局はハッチの思惑通りになります。つまり、世界は必ず破滅するということです。
ハッチは「時間の終わり」と「人類シフター化計画」を実現しようと何度も挑戦していた
引用:Quantum Break – 無題のメモ
ポールは時間の終わりを乗り切ろうと過去に戻り準備を整えました。対照的にハッチは時間の終わりを実現させるために、それに加えて「人類シフター化計画」を進めるために、タイムマシンを使って何度も正解のルートを模索していったのです。何万回、何億回と。ハッチの時間軸は誰よりも長いはず。
ジャックが数回タイムトラベルして時間の断裂を修復したように、ハッチもタイムトラベルを何度も行って時間の終わりを実現させたのです。となると、一つの世界にハッチ本体が何体も存在することになってしまいますが、ハッチは人間の姿とシフター状態を切り替えられるので、つじつま合わせは容易に行えたはず。
実際、ジャックが世界を救った後もハッチは何食わぬ顔で生きながらえています。モナークソリューションズが起こした騒動を全てポールのせいにできたことで、社員に対して自分の死を簡単にごまかせたのでしょう。
ゲーム序盤で後ろを振り向くと、ハッチが立って何かを待っているのを確認できます。何度も過去をやり直すうちに、ジャックが大学に到着することが計画実行の目安になっていったのではないでしょうか。
ハッチは人間としても生きたかった
ハッチが本気を出せば一瞬で全人類をシフター化させることだって可能でしょう。しかしそれはハッチの性格上、到底無理な話です。一気に人類を変えられるとしても、彼は少しずつ変えていきたいのです。それは「ハッチ」という名前を自分に付けたことから伺えます。
引用:Quantum Break – 無題のメモ
「無題のメモ」に残されたメッセージからは、ハッチの人間性が伝わってきます。ハッチはシフターとして苦しんでいた時に一度人間性を失ったのでしょう。でもやっぱり人間としても生きていきたい。だから神のような存在になってしまったとしても、たとえ何も分かっていない人間に対しても人として接していきたい。そういう気持ちが「無題のメモ」から感じられます。
ハッチが全人類をシフター化したいのは、結局のところ理解者が欲しいだけなのではないかと思うのです。ハッチには友達がいませんでした。シフターと人間が分かり合えるわけがありませんから。
しかし、対抗手段について誰よりも研究していたヘンリー・キム博士なら、自分の気持ちが分かるのではないか。そう考え、キム博士をシフターに変えてしまいました。
無時間状態の空間に閉じ込められたキム博士(シフター)をハッチが解放する際に「仲間のもとに… 神のもとに戻る時だ」と言ったことから、ハッチはキム博士に対して好意的だったことが推察できます。つまり、ハッチはキム博士となら分かり合えると思っていたのです。
キム博士は人類シフター化計画が失敗に終わる要因の一つだった
とはいえ、「ハッチはキム博士と分かり合えることを望んでいた」というのは少々強引な妄想かもしれません。
ハッチが、キム博士が「シフター化を止める手段」を発見するのを全力で阻止したのは、ハッチにとっては重要な任務でした。もしシフター化を抑える技術が発達したら、ハッチの人類シフター化計画が破綻しますから。
運命は一度決まると絶対に変えられません。だから、ハッチは時間の終わりを実現させるのと同時に、キム博士を殺す(シフター化させる)必要があったのです。
人間ごときがハッチの計画の全容を知ることは不可能です。ポールでさえ時間の終わりを乗り切ろうと躍起になっていたぐらいですから。ポールはキム博士が狙われていることに全く気付いていませんでした。なので、ハッチは簡単にキム博士を始末できたのです。
とりあえずモナーク社員を全員シフター化させることから始まった
ハッチは、人間には到底理解できない計画、つまり「人類をシフター化させる計画」を企てていましたが、どのようにして人類をシフター化させようとしていたのでしょうか。
答えは「目薬」です。
引用:Quantum Break – 無題のメモ
「無題のメモ」に記述されていた「君達全員」は、モナーク内にいる人々のことを指しています。ハッチはクロノン粒子が入った目薬や、または体内にクロノン粒子を注入できる物(飲み物とか)を社内に供給していたことが、隊員が使っていた「目薬」から伺えます。
ハッチはポールのチーフアドバイザーでもありました。社員の指揮を取っている立場から考えて、ポールは社内でもかなり上位のポジションについていたことは容易に想像できます。社員食堂で食べられる食材などにもクロノン粒子を混入させることは簡単だったはずです。
そのようにして社員を少しずつ被ばくさせて、全員がシフターになるのを待っていたのでしょう。
ポールはハッチの計画に賛同した
登場人物の中で、一人だけハッチのことを理解できた人間がいます。それはポールです。第4章のタイム分岐で「身を委ねる」を選ぶと、第5章のジャック対ポール戦で、ポールは今まで準備してきたことがどうでもよくなり、こんなことを口走ります。
「ライフボートなどくそくらえだ あとは時間が切れるのを待って終わらせるだけだ」
「もうやめるんだ ジャック! お前はまだ分かってないだけだ すべてが静寂に包まれた状況がどんなものか 今からでも私達に協力しろ」
そしてジャックは「私達? 誰の事だ?」と聞き返します。
ポールの言う「私達」とはモナークのことではなく、シフター達のことを意味しています。
何をしてもクロノン・シンドロームが治らないことを完全に悟ったポールは、ハッチの書いた「無題のメモ」に影響され、「もうすぐシフターになるであろう私にとって、むしろ時間の終わりこそが最高の解決策なのではないか」と考えを改めることにしたのです。
この考えはシフターにとっては正しい考えです。シフターは時間の終わりでなら苦しまずに生きていけます。しかし人間にとって時間の終わりは死を意味します。シフターとなりつつあるポールの気持ちを、人間であるジャックが理解できるわけがありません。
ポールはシフターとして死んだのか
ラストでポールがシフターとなってジャックを襲った時に、ポールは完全に消滅しました。シフターには同時に存在しているバージョンがいくつもあり、たとえ致命的な攻撃を与えてもそれは一つのバージョンが減るだけで、完全にシフターが消滅することはありません。
対抗手段を設置する際の衝撃によって、ポールの全てのバージョンが消えてしまいました。しかし、本当にポールは完全に消滅してしまったのでしょうか。少し疑問が残ります。
もしかするとシフターのまま世界をさまよっていて、時間のひずみによってシフター完全体になるのを待っているのかもしれません。なぜならポールは、ハッチの残した「無題のメモ」を確実に読んだはずですから。(じゃないと最終戦でポールの考え方がガラッと変わったことを説明できない)
引用:Quantum Break – 無題のメモ
ハッチの目薬は人間であり続けるために必要な物
ハッチはよく目薬を使用していました。その目薬にはクロノン粒子が入っています。
シフター完全体であったとしても、クロノン粒子を定期的に体内に注入する必要があるのでしょう。だからこそ、人間の姿を維持できるのです。この方法は、ハッチがタイムトラベルを繰り返していく内に分かってきたことなのではないでしょうか。
それでは、クロノン粒子はどこから取ってきたのでしょう。モナークソリューションズはグラウンド・ゼロからクロノン粒子を採取していました。シフター完全体でありモナーク上層部のハッチなら、至極簡単にクロノン粒子を入手できたはずです。
しかし、そもそもシフターはクロノン粒子を大量に保有しているはず。やはり、シフターは定期的に体にクロノン粒子を注入する必要があるというのは、少々論理的におかしいようにも思えます。もしかすると、ハッチはただ単に目が乾きやすい体質なだけかもしれません。彼の目はかなり大きいですし。
ポールを信じていた人はもっと自信を持った方がいい
多くのプレイヤーはウィリアム達が「運命は変えられない」という内容の発言をしたとしても、「どうせ世界は救われるんでしょ?」と思っていたことでしょう。
ジャックとクラリスのインタビュー形式でストーリーが進んでいったので、「二人が過去形でインタビューを行っているということは、世界は救われたに違いない」と途中で気付いた人もいるはず。私は第4章あたりでそのことに気づきました。ただ、そうプレイヤーに気付かせること自体が罠だったのです。
確かに世界は一度救われます。しかし、最終的にはクラリスに「ジャックの行動は間違っていた」と暗に伝えられます。
このゲームにおける勝者はハッチであり、正しい主張をしていたのはポールです。ポールのことを信じたプレイヤーだけが「俺はこのゲームに騙されなかった!」と胸を張って言っていいでしょう。
ジャックもウィリアムもプレイヤーも、みんな大バカ者だった
人の言うことを聞かずに突っ走っていったジャックが一番の愚か者であり、同時にジャックを安易に信じ続けたプレイヤーも大バカ者です。今にも脚本家の笑い声が聞こえてきそうです。「ゲームなんだから普通にハッピーエンドだろう」と舐めているゲーマーに対する罰なのかもしれません。
そして、一番のクソ野郎はジャックの兄であるウィリアムです。天才であるのにも関わらず、彼は「運命は変えられない」と知りつつ、ジャックを間違った方向に誘導していきました。しかし、これはストーリー上しかたのないことかもしれません。
今思うと、ウィリアムは生まれてはいけない人間でした。彼がいなければタイムマシンは作られません。天然のタイムマシンはいつか壊れてしまう運命なので、ハッチはシフターのまま世界を傍観し続けるだけの存在になっていたはずです。
ジャックは時間の断裂を直すのではなく、ウィリアムを殺しに行くべきでした。…と言いたいところですが、ジャックとウィリアムが対抗手段を使って時間を修復する運命は決まっているので、何を言っても無駄です。
真のエンディングはポールとベスが見た「時間の終わり」であり、これはどうあがいても変えられません。
しかし、ポールがライフボート・プロトコルで生き延びようとしたように、世界を一度救った後はジャックとウィリアムもポールと同じ結論に辿り着くのかもしれません。
最後に:見方によって変形する怪作
改めてもう一度言います。この考察記事は一個人が都合よくストーリーを解釈したものであり、妄想です。人によってストーリーの解釈は違います。視点を変えればまた違った一面が見えてくるでしょう。クォンタムブレイクが、こういう記事が書かれたり、SNSで活発にストーリーについて議論されることを狙った作品であることは明白です。
プレイヤーにストーリーを考えさせて記憶に残るように仕向ける手法、主役にではなく敵のボスにストーリーの選択権を渡すという大胆さ、それらの点においてクォンタムブレイクは独特。SFミステリーとしてはプレイヤーによって形を変える「だまし絵」のような怪作でした。
ちょっと敵の種類が少なかったのが残念でした。しかし、フィールドの構造・敵の配置や出現させるタイミングを変化させることによって、敵の種類の少なさをカバーしているところがうまい。キャラの動きのモッサリ感が少し気になりましたが、読書・ドラマ・アクションの配分はいびつ&挑戦的で満足しました。
それにしても騙されたなぁ。
ところで、「夢を追いかける」と言っていたブルースはうまくやっていけてるのでしょうか。家を担保にしてお金を借り、さらにはKickstarterでお金を集めていたみたいですが…。